『多動脳』創造性やイノベーションに不可欠な存在

「ADHD」という言葉を聞いたとき、あなたはどんなイメージを持ちますか?

“集中できない”“落ち着きがない”——そんなマイナスの印象を抱く方も多いかもしれません。しかし、本書『多動脳』はその考え方を改めさせてくれる一冊です。

本書では、ADHDの特性を「抑えるべきもの」ではなく、「活かすべき強み」として捉えています。

人類の歴史の中で、その特性がいかに役立ってきたのかを科学的に説明しながら、社会における多様性の重要性を改めて考えさせてくれます。

さらに、ADHDの人が持つ独自の発想力や行動力をどう活かせばよいのか、教育や職場環境の観点からも学べる内容になっています。

書籍情報

  • 書籍名: 多動脳
  • ジャンル: ビジネス/心理学
  • 筆者: アンデシュ・ハンセン
  • 出版社: 新潮新書
  • 出版年: 2025年4月20日

『多動脳』との出会い

著者アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』を読んでいたことから、彼の新作にも興味を持っていました。

しかし、それ以上に大きな理由がありました。

私の子供はADHDのグレーゾーンと診断され、現在も薬を飲んでいます。

学校生活の中で悩むことも多く、親としてどう寄り添い、どんな環境を整えればよいのか、彼が小学校低学年のころは本当に悩んだものでした。

本書の「ADHDは弱みではなく、特性だ」という視点に触れたとき、これまでの「ADHDは抑えなければいけない」という固定観念が崩れていくのを感じました。

そして、我が子が持つこの個性を活かせるようことを一緒に探してあげたいと強く思わせてくれました。

そのためのヒントも本書に詰まっています。

『多動脳』がくれた気づき

ADHDという特徴が今でも残っていること自体が、歴史的に<強み>だったことを示している

アンデシュ・ハンセン,『多動脳』,新潮新書,2025年4月20日,72ページ

人類は、新しい環境を発見し、変化に適応することで進化してきました。

その過程で「集中力が続かない」「すぐに動き出してしまう」という特性は、実は新たなアイディアを生み出し、発展を促してきた要素だったのです。

考えてみれば、「集中できない」のは、本人にとってその作業が“つまらない”から。

しかし、心から興味を持てるものに出会えたとき、ADHDの人の集中力は爆発的なものになります。

これは、学習や仕事の場面でも重要な視点になると感じました。

ADHDの特徴を抑え込む代わりに<強み>として活かすのだ

アンデシュ・ハンセン,『多動脳』,新潮新書,2025年4月20日,108ページ

職場や学校では、周囲と足並みをそろえることが求められます。

これは必要な場面もありますが、一方でユニークな発想や異なる視点を押し殺してしまうリスクもあるのではないでしょうか。

例えば、ブレストの場では、一見突拍子もないアイディアが、最終的に革新的な解決策につながることがあります。

だからこそ、個性を活かしながら議論できる環境を整えることが、より良いチーム運営につながるのです。

ADHDの研究を元に学習に使えるアドバイスをさせてもらう

アンデシュ・ハンセン,『多動脳』,新潮新書,2025年4月20日,176ページ

本書では、集中力を鍛えるための具体的なアドバイスが多数紹介されています。

これらは、私の子供の学習方法を考える上で、非常に役立つものでした。

そして、誰でも多動脳の要素を少しでも持っていると考えると、ここに書いてあるアドバイスは誰にでも適用できるものでした。

このように、ここに書いてあるアドバイスは仕事でも十分に応用できるものでした。

アドバイスの内容は、『最強の集中力』という別の書籍にも共通する内容が書かれていました。

今度はその内容も紹介しながら、さらに効果的な学習方法を模索していきたいと感じました。

こんな人にお勧め

  • 職場に少し落ち着きのない人がいて、どう対応すればいいか悩んでいる方
  • 身近な人や家族がADHDと診断された方
  • 多様性をもっと深く理解したい方

近年、ADHDと診断される人が増えている背景についても、本書が明確に解説しています。

私自身、この本を読んだことで、ADHDに対する理解が深まりました。

「特徴を抑え込む」のではなく、「強みとして活かす」という視点に立つことで、職場や家庭での向き合い方が大きく変わるはずです。

特に、チームの多様性をどう活かすかを考えている管理職の方々とって、必読の1冊です。

あとは、ネットの情報をそのまま鵜呑みにしてはいけないと改めて感じました。

ADHDと検索すると、その症状だけがクローズアップされ、発達障害だったり、日常生活が困難というネガティブな内容が並びます。

これを見ると、何とか抑えなければと、誰もが考えてしまうと思います。

そういった中で、ADHDが今なぜ増えているのか、なぜまだ残っているのか、を科学的に説明してくれる本書はとても素晴らしい書籍です。